根も葉もある嘘八百

光れ 光れ その先に何があっても

オオカミ少女と黒王子を見てきた話

(若干のネタバレを含むのでご注意ください)

遅ればせながら、映画「オオカミ少女と黒王子」を見てきた。

結論から言うと、めちゃめちゃ面白かった。

正直、この手の少女漫画実写化ものがありふれ過ぎる昨今に辟易していたし、主演がどこもかしこも同じ人間であることにも、作り手のアイディアが貧困すぎやしないかといらいらしていた。かくしてあまりいい印象を持っていなかった映画なのだが、先に見てきた友人がこの映画の山崎賢人は見たら絶対に惚れる、と絶賛するものだからだんだんと気になってしまい、結局見に行くこととなった。

 

作品のあらすじは不器用女子と俺様男子の王道ラブストーリーなのだけれど、描き方と演出がとてもシンプルで良かった。一番好きなのは、二階堂ふみ演じるエリカが、風邪で寝込んでいる恭也(山崎賢人)の家に看病に行った帰り道、一人で「今夜はブギー・バッグ」を歌うシーン。エリカの歌い方は大声でも、とびきり軽やかというわけでもなく、好きな人との時間を過ごせた喜びから、自然と声が漏れていくようなものだ。そしてこのシーンはかなり長いのだが、観ているうちになぜか涙が出てきそうになる。それはこの曲のマイナー調の旋律と、エリカは恭也への恋心に気づくもそれがまだこの段階では、周囲のために体裁を取り繕うための偽物であることへの空しさ、から来るように思う。このシーンの淡いリアリティから、ヒロインは二階堂ふみがやって大正解だったと思った。

オープニングのシーンも良い。エリカはいわゆるウェイ系の女子グループに属していて、本当は身の丈に合っていないのだけれどついていくために必死だ。必死なあまり、彼氏がいると嘘をつき、その証拠づくりのために渋谷の街で見つけたイケメン(恭也)に突然カメラを向ける。この一部始終が、あらすじの文章で見ると少女漫画にありがちな無茶な展開、にすぎないのだけれど、映画のシーンでは本当に普通の学校にいそうな女の子のが、必死の思いでやった行為だと伝わる。そしてそんな不審者まがいのことまでして、友人との付き合いを守ろうとしている様子に、実際のJK社会でも同じようなことはあるのかもしれないと少しさみしい気分になる。

 

キラキラしたストーリーでありながら、いたずらに効果音やプリクラのようなデコレーションを画面に散りばめるのではなく、あくまで優しいタッチで登場人物の成長を描く演出に、好感が持てた。

 

またベタな少女漫画ものですが、と侮るなかれ。作品ごとに違ったタッチや見せ方がある。「黒王子」というとどうしても2月公開の「黒崎くんのいいなりになんてならない」とイメージが被るのだが、実際に見てみると全く違うアプローチ方法だった。どちらも良作なので、その違いについてや、そのほかも含めた少女漫画実写映画の作風比較についてまたゆっくり綴りたいと思う。

 

 

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